太陽光発電システムの性能を維持するには、定期的なメンテナンスが必要です。しかし、システム自体の不具合ではなくて発電量が減少することもありますので、期待している発電量が確保されているか、興味があるところです。
山陰エコライフ研究所では、太陽光発電が正常に稼働しているかどうか、簡単に調査できる方法を検討しています。
※この試みは、鳥取県西部地域において脱炭素社会づくりに取り組んでいる市民団体「未来のエコラ」の社会貢献事業の一つとして実施したものです。
前述事例1の太陽光発電システムの月別発電量を調べてみました。
2014年1月の発電量が少ないのは、太陽光発電が稼働し始めた月でした。2014年8月も発電量が少なくなっていますが、これは日照時間が少ないためであることが分かりました。
これら情報から、事例1のシステムは、正常に稼働していると推測しました。
※設置計画時予測は、施工業者等から得た情報。発電量SIM予測は、前述の発電量シミュレーターを用いて算出した予測値で、ほぼ同じ傾向でした。
鳥取市境港市の日照時間のデータは、気象庁ホームページから入手しました。
太陽光発電システムの性能を正確に把握するためには、システムが設置されている環境の調査や日射強度に応じた電力が生じているかどうかを確認する必要があると考えます。
そこで、全天日射計を用いた日射強度計測とパネル面の温度計測を行いました。
測定を行った太陽光発電システムは、家屋屋根の2面(大屋根及び1階屋根・西南西)に設置されている多結晶の太陽電池モジュールで、容量は、4.48kW(大屋根3.52kW、1階屋根0.96kW)、枚数は22枚(大屋根
22枚、1階屋根6枚)でした。
発電電力理論値は、
日射強度×パネル面積×モジュール変換効率×温度補正係数×経年劣化係数×パワコン変換効率
より推計しました。
理論値推計に必要な情報は、太陽光発電カタログ値やWebに掲載されているデータを引用しました。
測定期間中の発電電力を発電モニターにより確認したところ、2.95kW(測定期間中の最大値)でした。
理論値2.85kWより高い数値を記録していたことから、正常な機能であると考えることができます(詳細検証中)。
電力会社の配電線から家庭へ引き込む電圧は、電気事業法施行規則により「100V供給の場合は101V±6Vを超えない範囲内とする」と定められています。
そのため、太陽光発電により電圧が107Vを超えると、せっかく発電した電気がパワーコンディショナーで抑制されてしまいます。
また、屋内配線の長さなどに起因して、抑制されることもあります。
下図のような太陽光発電システムで、約1週間、電圧抑制の確認を試みました。
売電電力量計端子(B点)で計測したデータを、次の図に示します。
電圧上限値107Vを超える記録が数か所確認できました。2時間程度の抑制を記録された日もありますので、電力会社へ相談する必要がある事例でした。
屋内配線などの長さに起因する電圧抑制の確認は、パワーコンディショナー端子(A点)と売電電力量計端子(B点)の電圧差を見ます。A点とB点の電圧差が2V以上となる場合、電圧上昇抑制の可能性があるとされていますが、今回の測定では確認されませんでした。
屋内配線等に問題がある場合は自己責任で改善しなければなりませんので、早期に調査し、太陽光発電設置工事の保証期間内に改善を行いたいものです。
2012年から始まった「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」以降、太陽光発電システムの導入は著しく伸びました。太陽光発電システムは、地球温暖化防止対策上たいへん重要な取り組みである一方、システム性能の劣化や異常の早期発見や電圧抑制対策など心配される要素もあります。
今後、買取価格の減額、保守契約終了後のメンテナンスへの不安、太陽光電池モジュールの経年劣化などの不安から太陽光発電システムの導入速度が鈍化することがないよう、設置者のメリットを確保するための研究に取り組みたいと考えています。
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